温泉とともに歩む人々の暮らしを感じながら歩く「別府・朝見散策」～前編～
地面から湧き出る湯けむりは、そこで暮らす人々にとっては見慣れた日常の風景。しかし、観光や散策で訪れた人々にとってその日常は、訪れる人々を優しい温泉情緒で包み込み、心身を癒やしてくれます。別府市内には、そんな場所があちこちに点在していますが、今回訪れたのは別府市の中心地から少し離れた、まさに「別府らしい日常」を感じることができる「朝見地区」です。
小さな共同浴場がいくつもあったり、古くから営む商店や歴史ある場所なども点在しています。そんな朝見の町を巡りながら、おすすめのお店やスポットを散策してきました。
別府工芸の代名詞「竹製品」や民具、古美術に出会える店
朝見の路地をてくてく歩いていると、ひっそりと落ち着いた趣のある建物が目に留まります。訪れたのは「朱竹堂（しゅちくどう）」です。「朝見の風情になじむよう、古民家風の造りにしたんです」という店主の貴嶋さんが優しく出迎えてくれたこちらは、別府の伝統工芸である竹細工や古美術品を扱う店。民具や古美術が好きな貴嶋さんの「別府が誇る竹細工製品や大好きな民具、古美術の店を構えたい」という思いで、自身が生まれ育った朝見に2024年8月に店をオープンさせました。
店内に足を踏み入れると、大分県を代表する工芸品である別府竹細工をはじめ、浮世絵、陶磁器、仏像といった様々な古美術品や絵画などが目に飛び込んできます。まるで小さな美術館のような空間で、一つひとつの品が丁寧に展示されています。
特に目を引くのは、竹の多様な素材の性質や表情を生かした数々の竹製品たち。
竹細工職人が丁寧に手作りして編み上げた商品は、上品で存在感たっぷり。確かな技術と手仕事だからなせる品々は思わず見入ってしまいました。
他にも普段使いできる竹箸や弁当箱、料理道具、カトラリーなどをはじめ、かご、バッグ、インテリア用品と、竹を使ったお手頃な商品も多数並んでいるのでお土産や贈り物などにもオススメです。
朝見で暮らす人々とともに歩んだ寺「長松寺」
朱竹堂の店主・貴嶋さんが「私の幼少時代の遊び場だったんよ」と教えてくれたのが「長松寺」です。朝見の静かな住宅街にたたずむこの寺は、地域の人々にとって心のよりどころとなる存在として、長きにわたり親しまれてきたのだとか。
長松寺の歴史を紐解くと、約1450年前に朝鮮半島の百済という古代王朝から来た豊国法師という僧が、別府の吉備山に朱雀院（天皇が意を譲った後に住む宮殿）を建てたのが始まりとされています。その後、約800年前に山崩れがあり、現在の場所に移されました。境内には「阿弥陀堂」があり、30年に一度公開されるのだとか。また境内には古代の遺跡であるドルメン（支石墓）と人面石が眠っているとの伝説も！山門の前に咲く四季折々の美しい花々や佇まいだけでなく、多くの伝説に彩られたとても興味深いお寺でした。
さて、語りつくせぬ朝見の魅力は後編へと続きます。お楽しみに。
■朱竹堂（しゅちくどう）
別府市朝見1-13-35
■長松寺（ちょうしょうじ）
別府市朝見1-12-4
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